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DX Accelerator

Award Winner Interview_01
- とにかくスタートアップにスピードで負けたくない -
常識を覆す開発スピードでシェアNo.1を実現!
社内発ソリューション「サステナブルスター」開発の経緯に迫る

カスタマー&ビジネスソリューションカンパニー ソリューション事業推進部
「サステナブルスター」開発メンバー

(写真左より)上段:出﨑 菜未氏、板津 秀彰氏(プロダクトマネージャー)西村 美緒氏、松田 拓也氏、新谷 圭右氏(チームリーダー)
       下段:辻川 寛人氏、濱田 一希氏
(写真左より)
上段:出﨑 菜未氏、板津 秀彰氏(プロダクトマネージャー)西村 美緒氏、松田 拓也氏、新谷 圭右氏(チームリーダー)
下段:辻川 寛人氏、濱田 一希氏

昨年度、東京ガスグループで開催された「DX ACCELERATOR 2024」で見事金賞を受賞した「サステナブルスター」。
従来、膨大な手間がかかっていた企業のESG・脱炭素報告業務をDXで劇的に効率化するソリューションとして社内外から注目を集め、2022年のリリースから3年でREIT業界トップシェアを獲得するなど、着実に成果を上げています。
東京ガスにありながら、スタートアップのようなスピード感でサービスを展開した秘訣はどこにあったのでしょうか。開発の中心メンバーに、プロダクト立ち上げから現在に至るまで、そして目指す未来についても語ってもらいました。

きっかけはお客さまの「切実な悩み」

サステナブルスターとはどのようなサービスでしょうか。

板津

複雑化・高度化する不動産・REIT業界のESG業務を抜本的に効率化するクラウドサービスです。企業には様々な環境制度に対する報告が求められていますが、その報告業務には膨大な工数がかかっているのが現状です。例えば、電気やガス、水道などの請求書をExcelで集計し、各制度に合わせて体裁を整えて提出する必要がありますが、所有物件が多い企業だと、対象となる請求書が数千から数万枚にのぼることもあります。
その煩雑で膨大な作業をシステムで代替し、ワンストップの報告を可能とするのがサステナブルスターです。おかげさまで、REIT業界トップシェアとなるシェア30%にまで成長し、現在の契約社数は約40社、利用社数180社、サービス利用建物数は2,000棟強(2025年3月時点)となっています。

開発にはどのようなきっかけがあったのでしょうか。

板津

新事業立ち上げに向けて複数のお客さまと打ち合わせをしていた際、あるお客さまから「環境制度の報告対応に大きな課題がある、本当に毎年大変な思いをしている」と切実な悩みを伺いました。そこで、東京ガスのエネルギー分野の知見とシステムを融合すれば、お客さまの役に立てるのではないかと考えたのが発端でした。

スピード開発の裏にはメンバーの「危機感」があった

立ち上げ時のチームの体制はどうでしたか。

板津

最初は4人からのスタートでした。外部ベンダーの皆さんとも協力しながら、朝から晩までつきっきりで開発に取り組んでいましたね。

少人数ながら、さながらスタートアップのようなスピード感で開発が進められた要因は何でしょうか。

板津

実は私も新谷さんも中途入社で、もともとの働き方が影響しているかもしれません。ただそれ以上に、この業界は新しい企業が続々と登場し、環境制度も次々に変わっていきます。即座にキャッチアップして価値を出さないと、すぐに置いていかれて、お客さまから見向きもされなくなってしまうという危機感がありました。そこはお客さまに任せることなく、常に最新のものを提供し続ける必要性を、メンバー全員が強く感じていたことが大きいと思います。

新谷

そうですね、やっぱり新しい事業を立ち上げるにあたって、もう減速する要因は東京ガス内にいくらでも転がっているのですが、とにかくスタートアップにスピードで負けたくないという想いがありました。規模の大きな企業だと「時間がかかるのは当然」となりがちですが、一つひとつその原因をひも解けば、実は回避できることが多い。ならば、時間がかかる要因を極力プロセスに取り込まず、サービスやビジネスモデル設計自体を工夫することで、自分たちの求めるペースで事業を進めることができたかなと思います。
あとは…当時の部長の方針として「アジリティ(機敏性)を重視して、もっと早く」と叱咤激励いただいていて、立ち止まって考えているよりも、まずは前に進んでみようというカルチャーになっていたことが大きいです。

「開発が先か、提案が先か…鶏卵に陥りがちだが、そこは勇気をもって飛び込んだ」

具体的にはどのような工夫を行ったのですか?

新谷

プロダクトベータ版の開発に3か月かかりましたが、その後の社内セキュリティ審査でさらに3か月半かかることが分かりました。だからその間は何もできないかというとそうではなく、「もうお客さまに提案へ行ってしまおう」と決めました。もちろん審査に通る見通しがないならばダメですが、おそらく通るという見通しもあった。その間に、パワーポイントベースでお客さまへ説明し、審査が通ったらすぐに契約いただけるよう進めることはできる、ということで動きました。提案の過程でたくさんのフィードバックをいただき、追加のプロダクト設計に繋げたりもできました。
セキュリティやコンプライアンスの観点でスキップしてはいけないプロセスも多いですが、直列で繋げると2・3年かかってしまうところを並列で進める、100点を目指すための仕様はプロダクトに組み込まないなど工夫しました。開発者にとってはリスクもありますが、いきなり100点を求めず、60点でいいので、自分が責任を持てる範囲、お客さまに迷惑をかけない範囲内でリスクをとる。それを地道に繰り返すことで、スタートアップにも負けないスピード感を出せたと思います。
新しいことは社内で判断しにくい面もあるので、とにかくまず行動してみて、成功なり失敗なりなにかしらの成果を持って帰った方が社内で健全な議論に繋がります。事前に調整し、根回しし、許可を取って、だと時間がかかるうえに、うまくいく保証もないため、そこは勇気をもって、まずはやってみる決断をしました。もちろん、プロダクトができてないと営業できない、という見方もあると思いますが、鶏卵の関係を前に足を止めるのではなく、スピード感を重視し、勇気を持ってまずは営業に飛び込んでいくしかないと前に進みました。

なるほど。そのような工夫でサービス提供までの環境を整えたのですね。実際のサービス提供後は順調でしたか。

板津

いえ、スピード重視でリリースしたため、お客さまのご要望に十分応えきれていない部分も多く、処理速度や機能面で沢山の問い合わせをいただきました。そこは、システム改修はもちろん、プロダクト開発担当とビジネス担当が一丸となり、お客さまの要望にどのように応えるか必死に考え、運用で対応したり、一部の業務をこちらで受け持ったりなど、多様な打ち手で乗り越えました。

使っていただき、フィードバックを受けて改善するサイクルを繰り返したと。

新谷

そうですね、1年目の契約は3社でしたが、最初はフィードバックどころか「ここ動かないんだけど」といったエラーやトラブル対応の連続でした。お客さまがそのプロダクトを使って国際機関に報告する期限があるなかで止まってしまったり、あとは最後の出力に致命的なエラーが出たり…。ですが、そこはプロダクトで直せる部分は直し、そうでない部分は運用でカバーし、「まずはこの3社だけはしっかり価値を出し切る」と決めて、何とか1年目を乗り切りました。
プロダクト自体がお客さまの課題にしっかりと刺さっており、サービス設計の「核心部分」が課題からブレていなかったことから、そのような状況でもお客さまにしっかり使い込んでいただけた。そこから、様々なフィードバックをいただいて、1社訪問すると本当に30~40ものフィードバックをいただくこともあり、「どうしよう」となることもありましたが(笑)
それもプロジェクトが成長するためには欠かせない過程で、宿題を持ち帰るたびに板津に「どうしようか」と相談するとすぐに改善案を出してくれてどんどん実装していき、それを繰り返していたらプロダクトがどんどん良くなり、業界内で拡がっていき、翌年から受注も急加速していきました。

サステナブルスター概要

お客さまの課題に真摯に向き合い、速やかに適切な提案を行えたことが強み

業界シェアナンバー1に至ったこのサービスの強み、また成功のポイントは何でしょうか

出崎

前職でもSaaS事業に取り組んできたのですが、サステナブルスターは本当にお客さま視点が非常に強いプロダクトでありチームであると感じています。SaaS業界では通常、お客さまが100人いたら、60人くらいが喜んでくれたらOKというラインがあるんですが、サステナブルスターは最低でも90人、下手したら100人全員が喜んでくださって、どのお客さまのところへ行ってもとても感謝されています。
それが実現できているのは、お客さまの業務を手順書を書けるレベルまで理解し、それをどうDXしていくかを考えて開発を進めた点だと思います。全てをシステム化するのではなく、手をかけるべきところは残し、改善点を見極める。また、手厚いサポートもお客さまの満足度向上に貢献しています。他にも、あえて業界特化型のプロダクトにすることで、お客さまの業務に深く踏み込み、そのお客さまのためだけのプロダクトを作れていることも強みだと思っています。

板津

やはりお客さまの課題に真摯に向き合い、適切な打ち手を速やかに提案できたことが成功の要因だと思います。組織としても、ビジネス担当と開発担当の距離が近く、双方がお客さまとじっくり会話する機会があったことも大きな要因ですね。お客さま接点が多いことで、開発初期からニーズを引き出す機会が得られました。

組織という言葉が出ましたが、チームはどのような雰囲気なのでしょうか

辻川

以前の職場では、エンタープライズ向けの大規模システム開発職でしたが、東京ガスに入りこのチームで仕事をしてからは、スピードや物事をクイックに進める重要性を日々実感しています。特に、お客さまのやりたいことに対し、我々だけでなく開発パートナーの皆さんも共にビジョンを理解し、高いモチベーションを共有くださるのが印象的です。口では大きなことを語っていても、いざ出来上がるプロダクトがいまいちでは意味がありませんので、理想を着実に形にしてくださるパートナーのみなさんがいるからこそ実現できています。今後は、我々がメッセージやビジョン、行動指針をさらに伝え、組織を大きくまとめ、牽引していくことが肝心だと思っています。

濱田さんはこのメンバーのなかで唯一新卒採用とのことですが、このプロジェクトを通じて嬉しかったことや良い経験となったことはありますか?

濱田

まだ入社3年目(当時)ですが、自分の提案が実際にプロダクトへ反映され、それをお客さまにご利用いただき、感動の声をいただけたときは本当に嬉しかったです。普段は開発担当として働いていますが、時々ビジネス担当に同席して、お客さまの声を直接聞けたのがいい経験になっています。

先日開催のサスティナブルスターご採用企業さまを対象とした“ユーザー会”の様子

DXの本質はお客さまや組織、自分自身の課題解決

いまほとんどの企業がDXに取り組んでいますが、「DX」とは何だと思いますか。

板津

DXは目的ではなく、あくまで手段です。本質はお客さまや組織、自分自身の課題解決にあり、その手段の一つにDXがあると思います。この世界は日々新しいものが出てきて追いかけるだけでも大変ですが、トレンドに少しでも触れていれば課題解決の大きな助けになります。そのためにも日々の勉強が欠かせないと感じます。

東京ガスグループ全体でDXをさらに進めていくために、今後何が必要でしょうか。

板津

私自身も、常にアンテナを張って学び続けたいと思っていますし、社員一人ひとりが知見をどんどん深めていくことで、グループ全体としてもっと大きなことができると信じています。皆さんとともに、これからも成長していきたいと思っております。

新谷

技術力の磨き上げも大事ですが、お客さまの課題解決にどう向き合うかが重要だと考えます。東京ガスが持つ強みを活かすことで、競合他社とも互角以上に戦えると確信しています。サステナブルスターで得たこの気づきは、他の案件でも十分通用するはずです。グループ全体でこの考え方が広がれば素晴らしいことだと思います。

最後に、サステナブルスターの今後の展望について教えてください。

板津

これからも契約数を増やし、利益を出せる体制にしていきます。また、サステナブルスターに限らず、第2・第3のサービスを立ち上げ、東京ガスが電気・ガスだけでなく、DXやデジタルサービスでも知られる存在になることを目指しています。

新谷

2年以内にREIT業界でシェア7割を獲得することや、大手ディベロッパー・金融業界への横展開も進めていますが、いずれも手応えを感じており射程圏内に入っています。脱炭素経営になくてはならない”ビジネスインフラ”になれるよう頑張ります。

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