コンテンツへ移動 フッターへ移動 サイトマップへ移動

GX×DX ─ 数値流体解析と AI の融合による洋上風力発電の設計高度化 ─

洋上風力導入に向けた
デジタル技術への期待

洋上風力発電は、脱炭素社会の実現に向けた社会変革(GX:グリーントランスフォーメーション)の推進において、導入拡大が期待されています。海に囲まれる日本ではそのポテンシャルが注目されますが、先行して導入が進む欧州と比べると年間平均風速が低い等、風況面で劣っており、発電量を高めるためにはより厳密な検討が要求されます。

風況の把握においては、観測に加えてコンピュータシミュレーション(数値流体解析)が重要な役割を果たします。東京ガスでは、これまでガスの燃焼や室内温度の解析等において培った数値流体解析技術に、最新の AI 技術を融合させることにより、高精度かつ効率的な風況解析の実現に取組んでいます。

複雑な風況を
高精度に再現する
数値流体解析

洋上風力発電所内においては、地形、気象等の周辺環境により形成される気流が、各風車の設置・稼動状況により変化するため、発生する気流とその変化を精緻に解析・予測する技術が必要となります。特に、風が風車を通過した後に速度低下と、乱れの増加を受ける「ウエイク現象」は、後方の風車の発電量低下と故障を誘発する可能性があります。このため、多数の風車が存在する洋上風力発電所ではウエイク現象は特に考慮しておくべきものとなります。風車 1 基を通過する際にも気流が複雑に変化する上に、多数の風車が存在する発電所内ではその変化は更に複雑化するため、解析・予測する難易度は非常に高くなります。
東京ガスでは、複雑なウエイク現象をデジタル空間上に高精度に再現する解析技術を開発しています。

ウェイク現象のイメージ

高精度化と
効率化の両立に向けた
数値流体解析と
AI 技術の融合

様々な環境条件や風車の配置パターンを数値流体解析により再現・評価することで、ウエイクの影響を最小化した風車の配置設計が可能になります。一方で数値流体解析では、ウエイクの複雑な気流を多数の連立方程式を解いて表現するため、解析の計算負荷が高くなり、多数の風車配置パターンを評価するためには膨大な時間を要します。
東京ガスでは、ウエイクの影響を精緻に評価しつつも、より短時間で風車配置の最適化を図るため、実際の環境で観測されたウエイクデータを学習させた AIモデルの開発を行っています。AI モデルを活用してウエイクの影響を予測することで、様々な風車の配置パターンで各風車の発電量を短時間かつ簡便に評価することが可能となります。これにより、風車配置の最適化プロセスに要する時間を大幅に効率化することを狙います。

将来的には、数値流体解析と AI モデルを連携させることで、高度かつ効率的な発電所設計を実現することを目指しています。複雑な物理現象を再現する数値流体解析と AI の融合は、風況解析に留まらず、他分野における種々の検討プロセスの効率化にも寄与する可能性を秘めています。東京ガスは、今後も多くの技術課題を高度かつ効率的に解決し、GX をはじめとする社会課題の解決に貢献していきます。

ウエイク現象の数値流体解析